ものぐさ読書宣教会

好きな本とゲームを布教するためのブログ。

「欲望年表」をつくる

千葉雅也という哲学者が『勉強の哲学』という本で、勉強の対象を有限化するために自分の享楽的なこだわりを分析しようと言っている。

享楽的こだわりを可視化するためには「自分が何を欲望してきたか」を知る必要があり、方法論として「欲望年表」と呼ばれる代物の作成を奨励しているようなので、自分も取り組んでみることにした。これを見て年表の作成に興味を持った人は是非自分でも作ってみて欲しい。比較したら面白そうだ。

 

2000-2006 〜自我が未発達期〜

大変恐縮ながら、記憶にございません。

 

好きだったもの…アニメ『パンダコパンダ』、戦隊ヒーロー番組。

 

2007-2008 〜イキり期〜

小学校低学年。

自分は小説が好きらしいと気付く。

「おれはアタマが良い」と思い込み、イキって太宰治三島由紀夫など、小学生の耳にも届くいわゆる「文豪」の作品に手を出す。当然わからず。

朧げに覚えているのが、三島由紀夫仮面の告白』が初めて目に触れた性的表現を含む作品だったこと。「なんかこれ、やべーぞ」と衝撃を受けた。(最近のものは知らないが)基本的に絵本や童話は異性愛規範に縛られたものが多いので、同性愛の表象もこの時初めて受容したと思われる。

また、三島由紀夫金閣寺』があまりに難解だったせいで、15年後まで苦手意識を引きずっている。

 

好きだったもの三島由紀夫仮面の告白』?

 

2009-2010 〜青い鳥文庫&ミステリ期〜

小学校中学年。

流石に純文学はまだ自分には早いと気付いて一旦遠ざかり、ジュブナイル小説(主に青い鳥文庫)やミステリにハマる。

具体的に読んだ作品は、青い鳥文庫だと『名探偵夢水清志郎ノート』シリーズ、『パスワード』シリーズ、『若おかみは小学生!』シリーズ、『黒魔女さんが通る‼︎』シリーズ。ミステリは、東野圭吾宮部みゆき湊かなえなど。(2010年に湊かなえ『告白』が映画化され、とても楽しみにしていたのにR15指定で見れず号泣した思い出。)湊かなえ『少女』の主人公格の少女2人の関係性に萌えていて、ここで既に後年のオタク化の片鱗が仄見える。

ドラゴンクエストⅤ』をプレイし、ゲームという媒体でも豊かなストーリーを表現できることを知る。もちろんパートナーはビアンカを選択。

 

好きだったものはやみねかおる『名探偵夢水清志郎』シリーズ、『都会のトム&ソーヤ』シリーズ、東野圭吾さまよう刃』、『容疑者Xの献身』、宮部みゆき模倣犯』、湊かなえ『告白』、『少女』、ゲーム『ドラゴンクエストV』。

 

2011-2012 〜ラノベ期〜

小学校高学年。

ここでオタク化。受験勉強をすると見せかけて、図書館でライトノベルを濫読する日々を謳歌する。

具体的には『涼宮ハルヒ』シリーズ、『とある魔術の禁書目録』シリーズ、『戯言』シリーズ、『文学少女』シリーズ。

特に『戯言』シリーズの著者である西尾維新にはドハマリして、500ページほどある作品を本屋で立ち読みして済ませていたのを覚えている。

今は足が疲れてできない。

ライトノベル特有の「キャラクターの人格が異常なまでにカリカチュアされ、リアリズムを逸脱していることが、逆説的に読者の目に生き生きとして映る」というメカニズムには今でも興味を持っている。批評家のミハイル・バフチンドストエフスキー作品を評して言った『カーニバル文学』が概念として近いかも。

マンガも好きになり、親の目を盗んで勝手に購入し、バレないように公園の土の中に埋めていた。

具体的には、『バクマン。』と『デスノート』と『めだかボックス』。すべて少年ジャンプにて連載。

また、ネット環境を入手し、2ちゃんねるにハマっていた。

 

好きだったもの西尾維新『戯言』シリーズ、『刀語』シリーズ、野村美月文学少女』シリーズ、竜騎士07ひぐらしのなく頃に』、『うみねこのなく頃に』、奈須きのこ空の境界』、大場つぐみ小畑健デスノート』。

 

2013-2015 〜メフィスト&同性愛文学期〜

中学生時代。

ゼロ年代」というムーブメントを牽引したミステリ小説雑誌である『メフィスト』にハマる。

メフィスト』の編集者たちが審査する文学賞である『メフィスト賞』を獲ってデビューした作家たちの小説を主に読む。

具体的には、森博嗣舞城王太郎佐藤友哉辻村深月汀こるもの、望月守宮の作品。

ちなみに先述した西尾維新もこのメフィスト組の一人であり、西尾維新佐藤友哉舞城王太郎が文学における「ゼロ年代」ムーブメントの立役者だと言われている。『メフィスト』から生まれたライトノベル的想像力は、実際に文学の観点からも革新的なものがあり、舞城王太郎は2003年に『阿修羅ガール』で、佐藤友哉は2007年に『1000の小説とバックベアード』で、それぞれ三島由紀夫賞を受賞している。デビュー初期には「重版童貞」と揶揄されるほどの売れない作家だった佐藤が三島賞を取ってしまったことに驚愕した哲学者・東浩紀ゼロ年代ムーブメントの理論的擁護者)が『クォンタム・ファミリーズ』を書き、これも2010年に三島賞を受賞。

こう書くと三島由紀夫賞がとんでもなく軽いものに思えてしまうかもしれないが、自分は日本の文学賞の中で一番好きな文学賞である。

この頃に東浩紀動物化するポストモダン』&『ゲーム的リアリズムの誕生』を読み、哲学や社会学を駆使して物語を読み解く「批評」という営為を知る。

また、三島由紀夫仮面の告白』が深層心理に影響を与えたのかは定かではないが、この時期に同性愛文学にハマる。

流れとしては、オタク趣味の一環として女性同士のプラトニックな恋愛を描いた百合漫画にハマっていて、薄々「これは男性読者を楽しませるための虚構なのでは……?」と気付き、当事者自身が性的マイノリティをテーマにして書いた小説を読み出すといったもの。このような自分の読書体験を踏まえて、ここ最近の百合&BLカルチャーの興隆には興味を持っていて、『ユリイカ』などの論考をちらほら読んでいる。

また、中学2年生の時に局所的に精神分析家のジークムント・フロイトにハマっている。

おそらくSF作家の筒井康隆が好んで自作にフロイト的モチーフを取り入れることからの影響で、なんでも幼少期のトラウマで説明している(ように思える)わかりやすさが魅力的だったと考えられる。もちろんフロイト自身の著作は難解なので読まず、専ら入門書を読んでいた。

所属していた文芸部の影響で、この頃に再び純文学作品を読むようになり、谷崎潤一郎川端康成など耽美主義のものをとりわけ好んだ。

また、ゲームは悪魔を召喚して戦うRPGである『真・女神転生』シリーズ(とりあえず東京が崩壊するのがストーリーの定番)に熱中。スピンオフ作品として『ペルソナ』シリーズがあるが、こちらの方が現在は人気である。自分は好きではない。

 

好きだったもの舞城王太郎煙か土か食い物』、『九十九十九』、佐藤友哉『1000の小説とバッグベアード』、汀こるもの『フォークの先、希望の後』、松浦理英子ナチュラル・ウーマン』、中山可穂感情教育』、『マラケシュ心中』、筒井康隆『パプリカ』、谷崎潤一郎痴人の愛』、『春琴抄』、川端康成『片腕』、三島由紀夫女方』、東浩紀動物化するポストモダン』、ゲーム『真・女神転生』、アニメ『serial experiments lain』、『エヴァンゲリオン』、『魔法少女まどか・マギカ』。

 

2016-2019 〜阿部和重舞城王太郎期〜

高校生と浪人時代。

学校の活動が忙しかったため、人生で最も読書量が少ない時期。

しかし、少しずつ文学にも面白さが色々あることに気づき始め、特にメタフィクションの要素に強く惹かれるようになる。

先述した舞城王太郎筒井康隆の作品に加え、90年代に「J文学」(当時そういう風なマーケティングをして出版社は売り出そうとした)の新進気鋭の作家として知られ、2005年に『グランド・フィナーレ』で芥川賞を受賞した阿部和重の作品を読み始める。奇しくも、舞城と阿部は両者ともゼロ年代東浩紀が高く評価した作家でもある。私見ではあるが、『グランド〜』は阿部作品の中では比較的つまらないのでここから読むのは断固としてオススメしない。

そして、段々海外文学が読めるようになり、サリンジャーフィリップ・K・ディックを読むようになる。

高3の時期に先輩の影響でガルシア・マルケス百年の孤独』を読み、ラテンアメリカ文学に興味を持つ。

また、批評にも興味を持ち始め、東の著作の他に宮台真司『終わりなき日常を生きろ』、大塚英志『物語消費論』、宇野常寛ゼロ年代の想像力』なども読む。

哲学入門系の本も読み始める。

ここで好きだったものは大抵今でもめちゃくちゃ好き。

 

好きだったもの阿部和重シンセミア』、『ピストルズ』、舞城王太郎ディスコ探偵水曜日』、筒井康隆『俗物図鑑』、『虚構船団』、『文学部唯野教授』、古川日出男『アラビアの夜の種族』、桐野夏生『ダーク』、村上龍『愛と幻想のファシズム』、町田康『ギケイキ』、宮木あや子『官能と少女』、高橋源一郎日本文学盛衰史』、桜庭一樹『私の男』、『赤朽葉家の伝説』、二階堂奥歯『八本脚の蝶』、宇野常寛『母性のディストピア』、サリンジャーナイン・ストーリーズ』、マルケス百年の孤独』、以下漫画、岩明均ヒストリエ』、藤田和日郎からくりサーカス』、沙村広明『おひっこし』、石黒正数『それでも町は廻ってる』、『ネムルバカ』、阿部共実ちーちゃんはちょっと足りない』、『月曜日の友達』、以下アニメ、『蒼穹のファフナー』、『輪るピングドラム』、『聲の形』、『リズと青い鳥』。

 

以上でした。

randoku-world.hatenablog.com

にて挙げた作品はなるべく除外しました。

この後大学時代へと続くわけですが、読む本を選定するやり方が本屋で目についた面白そうなものを手に取る、いわば散弾銃的な方式ではなくなり、書いていて面白くないのでやめておきます(読んでいる内容は滅茶苦茶面白いですが)。

大学卒業する頃になったらまた総括してみたいですね。

日が変わる頃に帰宅して、これ書くのに3時間くらいかかったので、いまむちゃくちゃ眠いです。もう寝ます。

 

それじゃあ、みんなも「欲望年表」つくってみてね!! おわり