ものぐさ読書宣教会

好きな本とゲームを布教するためのブログ。

小説

創造することをめぐるSF的神話——神林長平『膚の下』感想

膚の下(上) 作者:神林長平 発売日: 2013/11/15 メディア: Kindle版 すごいものを読んでしまった。 これは、神話だ……。 究極的な小説というものは、すべからくして神話になる運命なのかもしれない。 正直言って読み終わった今も冷め切らない感動が胸につか…

天使が跋扈する世界、起こり得るはずのない連続殺人──斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり 作者:斜線堂 有紀 発売日: 2020/08/20 メディア: Kindle版 「昔、こんな小説を読んだんですよ。小説というより掌編ですかね。あるところに写真に写らない体質の男がいた。男は誰とも写真を撮らないことを決めていたが、親しくなった…

疑似科学は本当に悪なのか?──宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』感想

彼女がエスパーだったころ (講談社文庫) 作者:宮内 悠介 発売日: 2018/04/13 メディア: 文庫 2年前に文庫本で読んだのだがその後失くしてしまい、地元の書店に置いてあった単行本を渋々購入して再読したのだが、それでも出費に見合うだけの内容はあったよう…

独断と偏見で選ぶ日本文学暫定ベスト10を紹介する

「好きな日本の小説を10冊挙げてみろ」と戯れで自分の脳髄に命令し考えると、毎回選ばれる10冊が変化していることに気付く。その日の気分やコンディションによっても変わるし、新たな名作を読むことによっても変わる。そんなあやふやで暫定的なリストだ…

常時乱痴気騒ぎのネオ時代小説──町田康『パンク侍、斬られて候』

最近読んだ本ではないのだが、お気に入りの日本現代文学なので記事を書く。 自分は批評的な読み方を会得した読者ではないので、読んでる最中は「おもちれ、おもちれ」くらいのことしか考えていない。だが、こうして紹介記事を書くことで少しでもその面白さを…

日本的ホラーとスピード感あふれる語りの悪魔合体──舞城王太郎『淵の王』

これもお気に入りの日本現代文学。 自分は小説を何度も読み返すタイプでは全然ないのだが、『淵の王』は4、5回は読み直している。 舞城王太郎は作品ごとに新たな文体を模索するタイプの作家なので(個人的にはその頂点にいるのが谷崎潤一郎と大江健三郎だ…

芸術的なまでに昇華された無慈悲と残酷──『隣の家の少女』書評

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー) 作者:ジャック ケッチャム 発売日: 1998/07/01 メディア: 文庫 「面白い」と言ったら誤解を招くほどトラウマ級の一冊なのですが、とても衝撃的だったので紹介しようと思います。現在42刷もされている扶桑社のいわば〈顔〉的…