ものぐさ読書宣教会

好きな本とゲームを布教するためのブログ。

2021-01-01から1年間の記事一覧

芸人よりも100倍オモシロい、松本哉という男——松本哉『貧乏人大反乱』感想、そして実際会ってきた!

ちょっとだけ近況報告。 こないだあるイベントに行ってきたら、“マルクス葬送派”の一員で在野の哲学者として活動し、2007年に亡くなられた小坂修平氏の奥さんが参加されていた。おれが話しかけると、奥さんは「最近世の中でまたマルクスが流行っているらしい…

中沢新一『ポケモンの神話学』検閲読書会

人類学者の中沢新一があの超有名ゲーム・ポケットモンスターについて論じた本があるらしい。初代ポケモンが発売された1996年当時、中沢は既にニューアカのスターにして中央大学教授。そんなインテリ野郎にポケモンを上から論じられてたまるか!ということで…

大澤真幸『〈世界史〉の哲学 古代篇』読書会メモその①

〈世界史〉の哲学 古代篇 作者:大澤真幸 講談社 Amazon 「大澤真幸『〈世界史〉の哲学』を読破しよう!」 ごく普通の大学生のおれはオカルト・アナキストを自称する謎の男と意気投合し、急遽2人読書会を開催する運びとなった。 この記事は、その第1回記録…

新興宗教に潜入してきた話

こうやって自分の恥部を晒け出すことは苦痛なので、それで自戒になればと書く。 自分は今日ある新興宗教に潜入取材してきた。 日本人なら全員が全員、知っている新興宗教。 宗教学を学んでいる学生という名目で潜入し、講師の方の話をふむふむとメモを取りな…

地獄の文芸合宿レポ

1日目大学の友人との五日間に渡る文芸合宿がスタート。ホテルにチェックインするとツインと勘違いしてセミダブルを予約している大失敗が発覚。男同士で眠るベッドの寝心地は苦痛以外での何物でもなかった。結局床で寝る。 熟睡できずにHPが減る。昼間ボルダ…

臓器売買×古代神話×暗黒資本主義——佐藤究『テスカトリポカ』感想

テスカトリポカ (角川書店単行本)作者:佐藤 究KADOKAWAAmazon 自分のような、特にビジネスで成功したいという野心を持たない人間が、最も効率良く金を稼ぐにはどうしたらいいか。 その究極的な解答は自身の肉体を細切れのパーツにして、売り払うことである。…

【小説】麻雀妖怪—五枚目の西—

私の脳髄を、麻雀という名の妖怪が徘徊している——。 そんな妄執に取り憑かれるようになったのは去年の秋頃からだ。 その日、私は普段通り新宿の雀荘で打っていた。東風戦、ウマ10-50・祝儀1000でピンレート——所謂、歌舞伎町ルールを採用している雀荘。もし箱…

ヒトと機械の境界が溶け始めた!——海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』書評

明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書) 作者:海猫沢めろん 発売日: 2016/05/27 メディア: Kindle版 著者の海猫沢めろんは、ホストやアダルトゲームライターなどの異色の経歴を持つ、現代日本文学シーンきっての変人作家だ。 デイトレードに…

創造することをめぐるSF的神話——神林長平『膚の下』感想

膚の下(上) 作者:神林長平 発売日: 2013/11/15 メディア: Kindle版 すごいものを読んでしまった。 これは、神話だ……。 究極的な小説というものは、すべからくして神話になる運命なのかもしれない。 正直言って読み終わった今も冷め切らない感動が胸につか…

【実録】『ウマ娘』廃人になった男

あるドラマの1コマ。 『チェンソーマン』は確かに面白いが、爆笑するだけで脳が壊れはしない。 真に脳を破壊するのは、ゲーム『ウマ娘』である。 先に言っておくが、私はコンシューマーゲーム(Switchやプレステなどの家庭用ゲーム)信者であり、大のソシャ…

天使が跋扈する世界、起こり得るはずのない連続殺人──斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり 作者:斜線堂 有紀 発売日: 2020/08/20 メディア: Kindle版 「昔、こんな小説を読んだんですよ。小説というより掌編ですかね。あるところに写真に写らない体質の男がいた。男は誰とも写真を撮らないことを決めていたが、親しくなった…

アガサ・クリスティ原作の傑作法廷映画──ビリー・ワイルダー『情婦』

情婦 [AmazonDVDコレクション] 発売日: 2018/03/16 メディア: DVD 最近知り合った洋画マニアの方に勧めて頂いたのだが、とんでもない傑作だった。 舞台は1952年のイギリス・ロンドン。 凄腕弁護士として知られるウィルフリッド卿の事務所を、洒脱な風体…

疑似科学は本当に悪なのか?──宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』感想

彼女がエスパーだったころ (講談社文庫) 作者:宮内 悠介 発売日: 2018/04/13 メディア: 文庫 2年前に文庫本で読んだのだがその後失くしてしまい、地元の書店に置いてあった単行本を渋々購入して再読したのだが、それでも出費に見合うだけの内容はあったよう…

【実録】スマホに脳を破壊された男

本当にスマホをやめたい。 コロナ禍で引きこもりがちなのもあるが、1日ごとのスクリーンタイムをチェックすると5時間を超えていて、食事や睡眠を除くと生活の1/3をスマホに費やしていることになる。 スマホでそんなに長時間何をやっているのかというと、自分…

雑誌ジャーナリズムの産みの親はなぜ自らを「俗物」と称したか──森功『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』感想

鬼才 伝説の編集人 齋藤十一 (幻冬舎単行本) 作者:森功 発売日: 2021/01/13 メディア: Kindle版 齋藤十一は文芸誌『新潮』の編集長を務め、『芸術新潮』と『週間新潮』を創刊し、その慧眼から「新潮社の天皇」と畏れられた出版界における歴史的人物だ。 そん…

独断と偏見で選ぶ日本文学暫定ベスト10を紹介する

「好きな日本の小説を10冊挙げてみろ」と戯れで自分の脳髄に命令し考えると、毎回選ばれる10冊が変化していることに気付く。その日の気分やコンディションによっても変わるし、新たな名作を読むことによっても変わる。そんなあやふやで暫定的なリストだ…

生活保護を題材に据えた社会派漫画──柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』1〜3巻感想

健康で文化的な最低限度の生活(1) (ビッグコミックス) 作者:柏木ハルコ 発売日: 2014/12/08 メディア: Kindle版 『健康で文化的な最低限度の生活』は、「生活保護」をテーマにしたかなり珍しい社会派漫画である。 ストーリーの大筋は、東京都の区役所に就…